安全対策
森や川といった天然のフィールドを利用する森のようちえんでは、楽しいことはたくさんありますが、危険なことも同じくらいたくさんあります。
見守りを基本とする森のようちえんでは、あらかじめ子どもたちを危険から遠ざけることはしません。子どもたちと同じ方向を見て、何が危ないのか、どうやったら安全に過ごせるのかを一緒に考えていくことを心がけています。
フィールドの安全対策
森のようちえんでは、毎日、異なるフィールドに出かけていきます。ある日は山、ある日は海、ある日は野原であったりします。
それぞれのフィールドでは、危険の種類や箇所が全く違います。
私たちは、新しくフィールドを設定する場合、複数回のロケハンを行います。そして、そもそもそこが森のようちえんのフィールドとして適しているのかを検討します。
同時に、子どもたちが遊ぶと想定したときに、危険が予想されるポイントをあげていきます。ポイントごとに、子どもたちの力だけでは防ぐことができない危険、事前に教えておけば防ぐことができる危険、保育者がその危険性を共有した上で見守っていればよい危険といった具合に種類分けし、データベース化して実際の見守り保育に活かします。
災害対策
屋外での活動が主となる森のようちえんは、地震やがけ崩れなどの自然災害と無縁ではいられません。災害対策については、日々、細心の注意をはらっております。
フィールドの選択
当日の天気予報に従い、天候的に活動が可能なフィールドの中から、検討の上で決定します(大雨、暴風などの警報発令時には、園舎において屋内での活動を実施します)。
降雨時や長雨の後などは土砂災害が予測されるため、切り立った崖などがあるフィールドは避けるようにしますが、雨や風なども子どもたちにとっては遊びの道具になるので、むやみにそれらを避けることだけを考えず、総合的に判断を行っています。
地震対策
地震については、教育機関に限らず、どの業界でも特に気をつかうところだと思います。特に森のようちえんでは、屋外での活動、しかも毎日活動する場所が異なるという性質上、地震がきたら机の下にもぐり、おさまったら園庭に避難といった画一的な避難行動が意味をなしません。そういった意味でも、地震対策については、日々、工夫を重ねています。
まず、すべての活動場所について、地震発生時の避難場所を明確にします。そのうえで、フィールドから避難場所へのルートおよび手段(ようちえんバスで移動するのか、徒歩なのか等)をスタッフで共有します(ルートについては、津波が想定される地震の場合と、そうでない場合に分けて、異なるルートを設定する場所もあります)。
こうすることで、地震などの災害発生時に、もし仮に連絡通信手段が失われることがあったとしても、フィールドにいるスタッフだけでなく、園舎で常駐しているスタッフも、現在の子どもたちの状況を正確に想定することができるため、関係各機関との正確な連携も可能となります。
その上で、避難訓練を月1回程度と、通常の保育園、幼稚園と比較しても頻繁に実施するようにしています。フィールド毎に、注意するポイントも、避難の方法も違うため、必然的に訓練の回数は増えます。
また、避難訓練は事前の打ち合わせなく、抜き打ち的に開始されます。これは、子どもたちだけでなく、スタッフも状況に応じた対応ができるかどうかを確認するためです。後に行うミーティングで反省点をあげて、避難計画の最適化を図ります。
危険な動植物への対策
風りんりんでの活動は、そのほとんどが屋外で行われるため、普段の生活では出会わないような動物を見たり触れたりする機会は多いものです。例えば、夏場の活動では、マムシやスズメバチと遭遇することもあります。春や秋などは、クマに遭遇する可能性※も高まりますし、ダニや毛虫などの中にも侮れない毒性を持つものは数多くいます。
また、植物の葉っぱや木の実は食べられるものも多いですが、食べてはいけないもの、触れてはいけないものも同じくらいたくさんあります。
そのような動植物に対する対策として、まずは保育者が毒性のあるものを把握するため、勉強会の実施等によるスタッフ教育を行っています。その上で、子どもたちにも標本や図鑑などを活用して学ぶ機会を設けるとともに、実際のフィールドの中で、朝の会などを通じて、ハチがいそうな場所、マムシがいそうな場所を確認する危険予知を行い、日々の活動ができる限り安全に行えるような配慮をしています。
※ツキノワグマは本来大変臆病な動物で、人間の気配を感じたら向こうから逃げてしまいます。新聞を賑わすケースは人間とクマがばったり遭遇し、パニックになったクマが人間を襲うというのがほとんどなので、森のようちえんの子がわいわい森の中で活動していてクマに遭遇する事はまずないでしょう。
もちろんこどもが一人で別行動する事がないようにスタッフが細心の注意をはらっております。
災害発生時の対策
自然の中で走り回ったり、木に登ったり、あるいは火を起こし、包丁やナイフを使って子どもたち自らが調理をするといった風りんりんの活動においては、どれだけ緻密な安全対策を実施していたところで、ケガやヤケドを完全に防ぐことはできません。また、持病がある場合や、そうでなくても何らかの原因により子どもが突然の発作を起こすといったこともあり得ます。
風りんりんにおける、災害発生を想定した備えについてご紹介します。
AEDの活用およびPUSH講習の実施
現在、ほとんどの公共施設や大きな商業施設など、いたるところに設置されているAED(自動体外式除細動器)は、何らかの原因で心停止が起こった場合の救命率を飛躍的に向上させる装置です。その有用性は、改めてここで語るまでもないでしょう。
風りんりんでは、AEDの使用方法を含めた心肺蘇生法の講習として、PUSHを実践しています。これは、大人から子どもまで実践可能な心肺蘇生法の学習方法となっているため、スタッフはもちろん、園児やその保護者さんも含めた講習を行っています。
園での活動のみならず、普段の生活の中で、不測の事態に遭遇した場合でも、その知識を役立てていただけるようであればと願います。
なお、活動中にAEDが必要になった際、使用できる範囲にあるかどうかは、フィールド毎に事前に確認して全スタッフが共有しています。
ういてまて
フィールドの中には、海や川をメインとするもの、また一部に湖畔等が含まれるものがあります。そういったフィールドにおいては、活動する中で、水中で足がつかない状況になってしまうこともあり得ます。
その際、スタッフなどが救出するまでの間、子どもたちがおぼれないように自衛する手段として「ういてまて」の講習を行っています。
「ういてまて」とは、着衣やペットボトル程度の浮力を利用して、水面に仰向けに浮き続けることで、体力を消費せずに救助を待つための方法論です。
いざというときでも、落ち着いて実践することで命を守ることができる方法として、風りんりんでは、スタッフ、子ども、保護者を含めて年1回の講習を受けるようにしています。
ヒヤリハット
日々の保育で、ヒヤリとしたこと、子どもたちの行動で気づいたことなどをお知らせします。
毎日ヒヤリと気づきの連続ですが、ヒヤリも気づきもそのこと自体に白黒つけることや、特別な対策を設けない場合もあります。それは、ヒヤリとすることから子どもたちが学び、次はどう行動するかが成長につながるからです。森のようちえんって、毎日どんな様子なの?どんな事件が起きるの? など、広く知っていただくために、スタッフミーティングで上がった事柄の一部をご紹介します。
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